So-net無料ブログ作成

あたちゃん

242-02.jpg


 拾ったスズメのヒナを育てて放したことや、その後わたしが外に出るとついてくるスズメがいるってことは、何度かメインのブログにも描いたので、ご存知だと思います。
 それからも、わたしが車に乗り込むとどこからともなく1羽のちゅんたが飛んで来て、車のすぐ横のフェンスにとまりわたしを見ている、なんてことも日常になっていた。
 

 ある時、2階の窓のブラインドを開けると、どこからか飛んで来たちゅんたがわたしの目の前でホバリングをした。
 急にブラインドを開けたので、びっくりしたのかと思ったけど、そのあとも同じことが何度も続いた。
 明らかにわたしを認識している。
 きっとあの子だ。
 放した子は、あたちゃんって名前だったので、当然その子もあたちゃんと呼ぶようになった。
 
 その頃から病院の2階の窓の外にえさ場を作り、そこにスズメのエサ(小鳥用のエサ、私はマメと言っている)を蒔くようにしてた。
 最初は警戒していたちゅんたたちも、しばらくすると先を競っては集団で食べるようになった。
 おそらくこの集団の中に、あたちゃんがいるはずなんだけど、みんな同じ衣装をまとったちゅんたの区別がつくはずもなかった。
 でも、このかたまりの中にあたちゃんがいるって思えるだけで、なんだかホッとした気持になれた。

 いつものようにマメを蒔く。
 近くの木にとまったちゅんたたちが騒ぎ出す。
 でも、わたしが窓際にいると警戒してえさ場には飛んで来ない。
 わたしがその場から消えるのを待っている。
 すると、視線の正面遠くに何やら黒っぽい点が見えた。
 その点は上下に素早く移動しながら急に大きくなった。
 あ、ちゅんただ。
 そうわたしが認識すると同時に、そのちゅんたはダイレクトにえさ場に着地すると、すぐにマメを食べ始めた。
 木にとまっていた他のちゅんたたちが、一斉にえさ場に飛び移ろうとする。でもわたしがいるので、すぐさまもとの木に戻ってゆく。
 そんな中、悠々とマメを食べる子。
 ひょっとして、あたちゃん?
 しかし、我慢出来なくなった他のちゅんたたちが一気にえさ場に飛び移ってきて混戦状態となったので、すぐにあたちゃんらしき子を見失ってしまった。

 さて、次の日。
 同じように、マメを蒔く。
 昨日、あたちゃんがらしき子が飛んで来た方向に目を凝らす。
 しばらく待っていたけど、その子は来なかった。

 さらに次の日。
 マメを蒔く。
 ...。
 あ。
 黒い点。
 上下に動きながら、見る見る大きくなりちゅんたの姿に。
 そして、着地。
 わたしが分かる?
 あたちゃんだよね。
 目の前にいるあたちゃんの特徴を探そうと、ちゅんたの数が一気に増えてくるえさ場の中であたちゃんを見失うまいとわたしは必死に追いかけた。

 病院から300メートルほど離れたところにある大きな木。そこにあたちゃんのお家があるのだろう。
 時々わたしの前に姿を見せなくって、心配させることもあったけど、ほぼ毎日、わたしがマメを蒔くとその方向から飛んで来てくれた。
 そして目の前でマメをつつくあたちゃんの姿を毎日観察した甲斐があって、やっと羽の特徴を見つけることが出来た。

 雨の日も風の強い日も雪の日も、全身ずぶ濡れになりながら、風に飛ばされそうになりながら、寒さに耐えるために思いっきり羽を膨らましながら、あたちゃんとその他大勢のちゅんたたちは、えさ場にやって来てはにぎやかな鳴き声を聞かせてくれた。


 いつものようにマメを蒔くとあたちゃんがやって来た。
 でも、ちょっと食べたところで、すぐにお家の方向へ飛んで行ってしまった。
 どうしたんだろ?
 すると、すぐにまたやって来た。
 今度は、もう1羽ちゅんたを連れて。
 ありゃ、パートナーが出来たんだ。
 パートナーの子がわたしに警戒してるのが分かったので、わたしはすぐにその場を離れることにした。

 そして季節は移り、春。
 あたちゃんの登場回数が少し減ったような気がしてちょっと心配していたら、突然、青虫をくわえてやって来た。
 えさ場の上で、マメを見ながら悩んでいる。
 そうだね、青虫くわえてたら、マメは食べられないよ。
 わたしはおかしくって、ちょっと笑った。
 すると、あたちゃんは慌ててお家の方向へと飛んで行き、すぐに戻って来た。
 口に青虫はいない。
 そうか、子育てしてるんだ。

 あるときは、頭を泥だらけにして、青虫をくわえていることもあった。
 先に虫をおいてから来ればいいのに、決まって慌ててお家にいったん戻るのだった。

 それからまた何日かして。
 いつものように、あたちゃんがやって来てマメをつつく。
 今までなら、ある程度の時間しっかりと食べてから帰ってゆくのに、その日は少し食べただけでお家に戻る。
 そして、すぐにやって来ては、急いでマメをつつき、またお家へ。
 そんなことを何度も繰り返した。
 今度は、マメをヒナに与えてるんだね。
 
 さらに何日かして。
 あたちゃんのマメ運びが今日も続くのかと思っていたら、近くの電線で大きな声で鳴く小さなちゅんたの姿が。
 マメをつついていたあたちゃんが向かった先はそこだった。
 あたちゃんが電線にとまると、小さなちゅんたはあたちゃんに向かって大きな口を開けた。

 ああ、なんだか涙が出て来たよ。

 もしもわたしが獣医師になって病院をやっていたから、あたちゃんとのこんな時を過ごせたのだとしたら、病院やっててよかったな、なんて思えるような気がした。
 ちょっとだけだったけど、世話をしたあたちゃんが外の世界で仲間と一緒に生活をして、子を育てている。そしてそのちいさなちゅんたもいずれは子を生み育ててゆくのだろう。
 なんだか、わたしよりも立派な生き方をしているような気がした。
 

 窓のえさ場は、次にマメを蒔く時間を待ちわびて並んで部屋の中を覗き込むちゅんたや、やっと独り立ちしたまだくちばしが黄色くって羽の色が淡いこちゅんたたちやらで、今日もにぎやかである。
 そして今、あたちゃんは今期2度目の子育て中のようで、あいかわらず忙しそうな毎日を送っている。



 242-01.jpg
 写真を撮ろうとしたら警戒して、みんな飛んで行ってしまった。
 そんな中、2羽だけが協力してくれた。
 

コメント(2)